宮本茂の仕事史@DIGITAL CONTENTS EXPO 2009

「世界でいちばん売れる何かを作りたい」 宮本茂氏が仕事史を語る @ファミ通.com
http://www.famitsu.com/game/news/1228842_1124.html

 という訳で、予告通り宮本茂氏記念講演@GCE2009 に行って
まいりました。

 会場に到着すると、さすがは世界の宮本、すごい人だかりです。
300席のホールがほぼ満席でした。

 講演の詳しい内容は上の記事を御覧いただくのが一番だと
思いますのでここでは詳しく省きますが、オケタニ的にグッと
きたのは…

「ゲームを作る際は、まずその基本的な仕組み作りを5人くらいで。
 それが出来上がったところで一気にデザイン等のスタッフを投入
 してデータを作っていく」

 これは1つの理想的な開発の進め方なのかもしれないなぁ、と。
贅沢な人の使い方でもありますが。普通、受託で仕事している場合だと
そんな悠長な作り方をするのは中々難しいのではないかと思いますし。
スケジューリング次第、と言われりゃそれまでですが。

 実際、開発進めてるとシステム面で曖昧になってたところが後に
なって「変えようにももう今更データ変えられんよ」という事になって
しまい、しょうがないので何とか折り合いつけて…という、納得の
いかない事態もあったりしますからねぇ。基本システムの練り込みの
重要度を痛感する一瞬であります。

 で、それでもかの有名な宮本氏の「ちゃぶ台返し」は避けられない
んだそうなので、理想と現実って厳しい(;´∀`)。

「今までと違うモノを入れると、大抵猛反対される。だけど
 『そのうち慣れる』と言って入れておくと、大体そのうち慣れる。」

 任天堂のコントローラなんかはその歴史の積み重ねの結果なんだそうで。
ファミコン誕生前はジョイスティック全盛期でして、そこに当時ゲーム&
ウォッチの「ドンキーコング」(持ってたなぁ)で使っていた十字
ボタンを搭載しようとした時にも「こんなものでゲームを満足にプレイ
できるか!」と猛反対されたんだそうな。それをごり押しで十字ボタンに
して、その結果は御存知の通り。

 当然それが「イイモノ」である事が前提ではあるわけですが、
「そのうち慣れるから」と言って常識ではありえない事に挑戦していく、
という事は新しいモノ・面白いモノを作る上では欠かせない要素
なのですな。

 別の話(ツール関係の話)のところで「その事について詳し過ぎる
人にはあまり意見を聞かない。そういう人の意見を取り入れてしまうと
『こうでなきゃいけない』という固定観念が強過ぎて、結局従来のものと
同じようなものしか出来上がってこないから」というお話がありましたが、
その辺りとのバランスの取り方も難しい点ですよなぁ(固定観念や常識は、
必ずしも悪要素ではないと思いますので)。

「自分達が作っているのは、『作品』じゃなくて『商品』」

 芸術作品なら今理解されなくても100年後に理解されればいい、
だけど自分達が作っているのは今いるお客様が触って楽しんで
いただけるものでなければならない、だから社内では「商品」と
言うようにしています、との事。

 これが本質的な正解なのかどうかはわからないけど、元々営業
というフィールドにいた自分にしてみると、ものすごく腹に
落ちてくる言葉でした。多分、オケタニが今向かわなければいかない
方向はそっちなんだろう、と。

「今求められているものが何か、を追及して作っていく。」

 これは特にハードの話のところで出ていたポイントだったのですが、
ファミコンからスーファミ、64、Wii へと変遷していく際に、
何が必要なのかという事を具現化して作られていったのが一連の
ハードだったようです。それが必要だ、となったらそれを載せるために
どうするかを考えて周りを整えていく。なので、柱になるコンセプトは
ブレない。

 生き方も含め色々ブレブレのオケタニには耳の痛い話。

「何をしたら面白いかを積み上げていく。」

 元記事の方で「ドンキーコング」の話の所に書かれていますが、
「こうしたらおもしろい」という事がまずあって、それを画面上に
どうやって表現するかを考えて作っていく、と。当たり前の事では
ありますが、自分が本当にそういう仕事の仕方をしているのか?と
改めて考えさせられました。

「100円入れてもらった後、次の100円をどうやって入れて
 もらうか、というところね。」

 個人的には講演の冒頭でアーケードのゲーム開発の話が出たのは
嬉しかったですなぁ、アーケードからこの業界に入った人間としては。
スペースインベーダーブームに乗じてゲームを作ろう、という話になり、
それが「ドンキーコング」の開発に繋がっていくわけですが、やっぱり
アーケード=如何に100円を入れさせるか、というのが基本なわけで。
オケタニも新卒入社以降、何度このセリフを耳にしたことか。

 アーケードビジネスのそういうシンプルなところって、やっぱり
好きなんだよなぁ。

 そんな訳で、約1時間の講演でしたが、オケタニ的には非常に
面白く、また考えさせられた、楽しい時間でありました。やっぱり
ミヤホンはネ申(゚∀゚)!

 1個だけ残念だったのは、このEXPOの実行委員長で東京大学教授
センセーがこの講演の司会をされていたのですが、その段取りが非常に
よろしくなかった事。プライベートではお知り合いのようでしたが、
あまりにも宮本氏の事を知らなくてトンチンカンな質問・話の取り回しが
多く、見ててウンザリしてきました。講演冒頭に自身の実績・作品を
結構な時間を割いて紹介されておりましたが、そこに来ていた
誰一人としてそんなものには全く興味も何もなかったことでしょう
(宮本氏は賞賛されておりましたが…)。もうちょっとまともに
司会できる人に御登場いただきたかった。そこが全く残念。

 因みにそのセンセー、講演が終わった後、スタッフに「宮本さんはどこ!?
中々こういう所に来ていただけない人だから、一緒に写真を撮らなきゃ!
ボクは今日、そのためにここに来たようなものなんだよ!」とグダグダ
言っておられました(有名人と並んで写真を撮りたがる自称名士の
オッサンみたいだ)が、スタッフ曰く「宮本さんは、終わったらすぐに
○○のセミナーを見たい、と言って出て行かれました」との事。

 講演直後のステージでもそのセンセーが恐らく自分の生徒であろう若い
男の子らを宮本氏に紹介しようとしていたようだったのですが、恐らく
そのセミナーに行きたかったのでしょう、何だか適当にあしらって
さっさと舞台袖に消えていかれる御様子の宮本氏。そしてそれを
慌てて追いかけるセンセー&生徒諸君。

 いや~、賞をくれた実行委員長相手でもそのフリーダムさ。さすが
宮本氏(;´∀`)。そこにシビれる! あこがれるゥ!

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